46 ― Blood on Letters ― (2025/07/14(Mon) 21:00:00 に更新) RSS
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C＃m：宵月 ヴィブラト
[漸く瞼が薄く開き、ぼんやりとした光が視界を覆う。
やがてその光はゆるやかに像を結び、
こちらの顔にむけて、切り傷のある手を差し出す
ひとりの人間の顔を形作っていた。]
「ヴィブラト様……ヴィブラトさん！」
「パパ、」
（ベネディクト、 ……… ……？）
[もうひとりの誰かの声が混ざっているのに気づくも、
それが誰なのかの心当たりを辿れぬまま。
未だ半眼の右側で、同居人の顔をぼんやりと見つめる。]
「良かった、よかっ、た、…………ッ、」
C＃m：宵月 ヴィブラト
「何なんすかあなた！！ なんで全く何あんな遺言みたいなメッセ送りやがったんすかヴィブラトさん！！ 万が一じゃなくマジで死んでんじゃないかって
「ごめんなさいベネくん、わたしも焦ってたんです、
パパがいたと思ってたら玄関先で倒れて……。
救急車はまずいかもって思ったから」
「わかってます、もうわかってますからカレンさん！」
[相変わらず四肢を動かすことも叶わないまま、
ヴィブラトは茫然と、何処かへと視線を向けた
ベネディクトの横顔を見遣り、漸く口を開く。]
……何が、どう、なってる？
「説明しましょうこのバカ貴公子！！！！」
「バカっていうのはやめてベネくん、
君とパパのことはともかく、
わたしのことは、パパにも黙ってたから」
C＃m：宵月 ヴィブラト
[「もうひとりの誰か」からの補足も交えながらも
ベネディクトが行った説明を端的に纏めると、こうなる。
その「知らない女」、カレン・クレセンツは、
出張でちょうどこの街を訪れていた際に
偶然、亡父によく似た男の姿を見つけ、
「まさか」と考えて思わず後をつけて――
宵月小堂の裏戸を開けた途端に倒れ込んだのを見て、
（家宅侵入にならないかと気掛かりになりながらも）
店内に運び込む形でヴィブラトを介抱した、とのこと。
……その「まさか」というのが、己の「亡父」である
ブレンダンが実は生きているのでは、ということ。
ジェニーと異なり、父の遺体を直接見ていないが故に
その「天国のパパ」と手紙の遣り取りを重ねるうちに、
もしかしたら、という思いが募ったのだという。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
「ネット上の『吸血鬼信奉会』なんて、
ゴス愛好家やホラー映画マニアのファン活動か
ジョークの一種かって思ってたけれど……」
[カレンなりに父の身に起きたことを調べる中で、
「吸血鬼」も含めた不可解な事象の存在にも触れ。
それこそ、父が埋葬された墓地での
都市伝説的な怪現象の噂も含めて。
非科学的だとは分かりながらも、
可能性のひとつとして「信じたかった」のだと。
こうした背景から、通常なら躊躇わない筈の
救急への緊急通報を行わず、
ダメモトでヴィブラトの所持品を調べてみたところ
携帯端末に画面ロックが掛かっていなかったので
そこから連絡先を辿って……という顛末である。
これはあくまで、現場判断に基づく緊急対応。
基本的に、他者の携帯端末を勝手に盗み見るのは
プライバシー侵害なのでくれぐれも真似しないように！]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[こうしてベネディクトは、カレンから
ヴィブラトの状況を知らされ、
なかなか復旧しない公共交通に歯噛みしながらも
先に運行再開した鉄道の方に飛び乗ったのこと。]
「……そういう訳です、ヴィブラトさん。
『知らない女』とかつい言いましたが、
あなたの娘さんには、僕も感謝してますから」
[そっぽを向いた同居人は、黙々と、
吸血鬼の四肢の拘束を解いていく。
拘束といっても、首から下の身体全体を
カーペットでぐるぐる巻きにした上で
二人がかりで手足を押さえつけていただけ。]
これは、夢じゃ、ないんだな？
夢の続き、とか、じゃ……。
[渇血からの深い眠りの中では、
夢を観た覚えは特に無かったが――]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[――ただ、誰かが「パパ」と呼びかける声だけは、
ぼんやりとした記憶の中に残っていた。]
「夢じゃないよ、パパ。
夢みたいだけれど、夢じゃない。
……だいじょうぶ。パパは『生きてて』、わたしもここにいる」
[未だぼんやりとしたヴィブラトの身を起こしながら、
その呆然とした顔を覗き込むのはカレンのほう。
初めて目の当たりにしたその大人の女性の顔には、
幼かったその少女の面影が、確かに滲んでいた。]
カレン、
C＃m：宵月 ヴィブラト
あの時は、……今までも、ごめんな。
ありがとう、カレン。
[父親の肩に両腕を回せるほどに背の伸びた娘に、
その父親は目を緩やかに閉じて、漸く、笑った。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[――こうして、ひとまずこの騒ぎが落ち着いた頃。
仕事でこの街を訪れていた身であるカレンは
彼女自身の端末の連絡先を伝えた上で、
宵月小堂を後にしていった。
その後、むすっとしながらも常以上に距離の近い、
そんな複雑な素振りのベネディクトから、
郵便受けに溜まっていた複数通の手紙を
つっけんどんに手渡された。突き付けられたともいう。
そこにあったのは、ヴィブラトも知る異邦の絵画を切手の柄とした
見覚えのあるデザインの灰色の封筒と、
何故か、水に濡れたような皺のある手紙。
……手紙は他にもあったかもしれないが、この話はまた後に。]
E：旋風 カペーシア
ー 荷物の運び出し ー
[…さて、結局のところカペちゃんは、
やっぱり相変わらずなんやかんやで貰ったモノたちを捨てられず、それぞれ物の種類に分けて、物品ごとに新たなボロアパートに運び込むしかないのでありました。
とほほ…と、涙を流しつつ、建物の建て替えが始まる前に、えっちらおっちら荷物を移し替えていき、何度も何度も新居と旧居を行ったり来たりしてぜーはーぜーはーと息が切れた]
あﾞ〜〜〜〜〜〜…！！！
こんなにアタシに背負わせるなんて、
人間共のばかばかばか〜〜〜！！！！！！
引っ越しするのも大変なんだから〜〜〜！！！
[荷物を一つ一つ運び出すたびに思い出すのは、それらを押し付けてくれやがった過去の友人たち。人間たち。その笑顔と死んでったときの顔。
パパ活のパパや大学のマブダチは、その点死ぬ前にバイバイできちゃうから気楽ったらない。……それでもやっぱ、何かをもらったり預かったりしたまま別れると、なんかやっぱまた会いたくなっちゃう。
えっさほいさ、えっさほいさ！
運び出しには何日もかかった。
大学に通いながら、パパたちに会いながらだからそりゃそうだ。ようやくすべて運び終えた日には、部屋のど真ん中で大の字になって倒れ込んでしまった。モゥマヂムリカペちゃん死ぬ死ぬ詐欺しちゃいそう。死ぬ死ぬマン]
E：旋風 カペーシア
[そんな中、最後の確認のために旧居に訪れれば、
その郵便ボックスに一通の手紙が入ってた。
封筒に貼られた切手は、クリーム色のスプレーバラを写実的に描いたもので、送ってくれた人のセンスを感じる。封筒と便箋のデザイン的に…グリッサさんからだ。]
あ〜〜〜ギリギリセーフぅ…
良かった、このまますれ違っちゃうとこだった！
えーとなになに…？？？
[相変わらず丁寧で格式のある言葉選びの文字で、実に読みやすい。
旧居の鍵を閉めて、ポストには「引っ越しました」と張り紙をして、新たな家に帰りながら手紙を読み進める。旅の経験から提供してくれる情報はとても有益なものだったし、彼と、彼のご主人様の話をよむと…なんだか胸がキュンキュンしちゃう気がした。
相手が生まれ変わってるのを信じて旅ができるなんて、こんなに一途な愛そうそう無い。…更に、そのたびに付き従う決意をしたグリッサさん自身のケツイと忠誠心も]
E：旋風 カペーシア
…あたしの心、かあ。
あたしの心に寄り添ってない…
ううん。わかんない、そんなのわかんないや…。
[そして、カペーシアが心に抱えている『気持ち悪さ』についても、彼は寄り添って考えて伝えてくれた。
自分自身では、「人間はみんな愚か！！！」だと思ってた。けど離れるとなると今度は何故か嫌な気持ちになる。そのスレ違いの原因は自分の心の中にある…
…まだ、わかんない。わかんないから手紙にのせて、この気持ちを整理してみることにした]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[寝起きの吸血鬼は、何日前に届いたかも知れない
幾通かの手紙を書斎に持ち込み、封を開けていく。
休眠前に書斎で手紙を書いていた際に
引き留めていた使い魔の鴉の姿も、
この時にはもう、書斎の内には見られない。
バッドコンディションで走り書きした結果
打消し線での訂正を大量に残した上に
最後の方になるにつれて筆致に不穏さが増していく
やや失礼な、或いはホラーめいた手紙の行方についても、
この時点のヴィブラトにはわからないこと！]
C＃m：宵月 ヴィブラト
（……結局、今は何日だ？
高速鉄道の復旧には数日掛かったって言うが……）
[携帯端末を見ればすぐに解ることも未確認のまま、
「前回から間を置かないまま」だというその手紙を、
体感上は確かに連日で届いてきたかのような心地で
ゆっくりと読み進めていく。
他愛ない日常のような遣り取りに記されていたのは、
「サプライズ」という細やかで温かな非日常。
くすりと笑みが零れてしまったのは、
誰かさんの手紙の中で触れられていた
「サンタクロース」のこともふっと思い出されたから。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[この手紙の時点での滞在地に加えて記されていたのは、
「苦しさ」ではなく、「希望」として綴られた
主の運命の相手との再会の旅路。
その「可能性」の語がすとんと胸に落ちたのは、
この時のヴィブラトも既に「再会」の片方を
思わぬ形とはいえ叶えられたからだったのだろう。
王子だけでなくグリッサにも向けた「僭越」なお節介にも
「是非」の答えが返ってきたことに右眼を細める。
独りで気張る必要なんてないこと、
困った時はお互い様であること。
“
もう「僭越ながら」の語を口にする心算はなかったが。
その右眼は、続けて綴られた問いを前に、
ほんの少しの間、思案から横に逸れていた。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[さて、ヴィブラトがベネディクトの店で働き始めたのは、
特に元々骨董商の経験があったから、という訳では無い。
この吸血鬼は、最初に保護されたセーフハウスを出て以降、
“同胞” のツテも含めて何度か “パートナー” を得ていた。
……が、その度にどこかでその相手と不和が生じ、
別れ話になって契約解消、という事態が続いていた。
この吸血鬼が未だに妻と娘を想い続けていたのが
凡その不和の原因にある。
つまり、単なる吸血と供血の契約のみならず、
愛人めいた関係を求められがちだったということだ。
そんな出会い別れを続けながらこの街に流れ着いた際、
ある “同胞” から伝えられたのが、
宵月小堂の店主になったという古美術商のことだった。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
《あの子は店を継いだばかりで、経営に不安があるんだって。
鑑識眼自体は大したものらしいんだけれどね》
《ベネディクトのやつ、人間嫌いをこじらせた挙句に
先代の頃のスタッフたちに見放されたらしいぜ。
それでも従業員は欲しいみたいだから……
今なら『猫の手鬼の手狐の手でも』って
アルバイトに即採用してもらえるんじゃないか？》
《ネットの信奉者コミュでも見かけたんだけど、
なんか、箱推し？って感じの信者みたいでさ。
まだ他の
これなら “パートナー” として利用できると思うけど》
[「箱推し」という語の意味はよく解っていなかったのだが、
ともあれこうした評に触れたことで、 “つなぎ” 程度の
関係になることも覚悟の上で、宵月小堂の門を叩いていた。
展示されている化粧鏡の前にそれとなく立つ、
などの（普段なら避けたい）行動を取りながら。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[とはいえ、古美術やアンティークの分野に関して
全くの門外漢という訳でもなかったこの吸血鬼である。
その所以は、ブレンダン・クレセンツとして
企業勤めをしていた頃に遡るのだが――閑話休題。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
[問いに対しての答えをひとつ思い描いたところで、
再び視線を戻した手紙の、その追伸を見て……。]
………、
そう、なのか。俺は。
[そもそもの “同胞” としての括りは別として、
あの王子と同じ類の「尊い」に自分も含まれるらしい。
それも、その王子の従者たるグリッサから見て――
そう思った時にヴィブラトは思わず声をあげ、
軽く頭を抱えながら、微かな嘆息を零した。
ヴィブラト自身、実は自覚が無いわけではない。
無いわけではないのだ。
無いのだが……誇らしさや照れというよりは
居た堪れなさのほうが、ここでは勝っていた。]
C＃m：宵月 ヴィブラト
「――照れなくていいのよ、ブレンダン。お世辞じゃないの。
あなたは本当に、写真映えする人なんだから」
C＃m：宵月 ヴィブラト
（まあ、別にグリッサ様も
王子殿下より俺がいい、なんて
考えてる訳じゃないだろうし、いいか）
[気を取り直してから、返事に取り掛かろうとして……。
最後にグリッサに送った手紙に記した覚えのある
己の休眠と店の休業についての話題が、
この手紙に記されていないことに思い当る。]
（「間を置かないまま」なら、行き違いか。
或いは届いていない、か）
[また誤配が発生した……とは努めて考えないことにした。
届いている手紙全てをまだ確認していないこともあり、
この時は一先ず返信を置いて、次の手紙の確認に移った。]
人狼側の勝利です！
全てのログとユーザー名を公開します。2025/07/14(Mon) 21:00:00 まで自由に書き込めますので、今回の感想などをどうぞ。
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