Am：朋義 グリッサ

―夜明け前―

[二台の車がセーフハウスに到着し、男は王子を部屋に送り届けた。
疲弊は見えなかったが、男の淹れたカモミールティーを飲んだ後は、彼は早々に休みたいと言った。
丁重には扱われていたようだが、数日間、部屋に閉じ込められていたのだからストレスはかかっていただろう。

休む準備を手伝うと、男も暫く留守にしていた部屋に戻る。
ベッドに腰かけると目元を両手で覆った。
主を無事に迎える事が出来て、深い安堵が包んでいた。
ついかっとなって暴力を振るってしまったが、後悔はない。
正直、あれだけではとても足りないとも思っている。

けれど一方で世話になったコミュニティが不利益を被るのは本意ではない。
そういった点では、示談に収まって良かったと言えよう。
痛みは吸血鬼を不当に軟禁したらどうなるかについての勉強代として、崇拝対象に旅費を貢いだとでも思って貰えると良いのだが。]