
37 【手紙村】あなたの願いは叶いましたか (2025/03/15(Sat) 07:00:00 に更新) RSS
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──学びの塔:日当たりの良い草むら──
[人形は回路の再調整後、図書館から借りてきた大きな植物の本を抱えて建物の脇に並んでいる草むらにしゃがみ込んでいた。
柔らかい土のところに生えている、小さな草花を一本一本見つめていく。]
違う……これは毒草……これは花咲かない……これは……
[生い茂る草をかき分けて、花壇の中まで覗いて、植え込みの隙間まで見ながら人形はその手足を泥だらけにして必死に探す。
花壇の一角に生えている優雅な花にようやっと辿り着いて、図鑑と照らし合わせるものの、思い描いていたものとは違い落胆した。]
……これじゃ、ない……。
もっと明るい……、
[すでに時刻は午後に差し掛かっていたが、人形は諦められずに場所を変える。]
(30) 2025/03/13(Thu) 22:47:05

[人形は汚れた手を服で拭って、薬草畑の方へと向かう。
人形は薬の勉強もしていないからどれが薬草なのかもわからないまま、ふらふらとさまよっていたがここでは花もほとんど見つけられない。
本を抱えて、足は素足のままだから泥だらけで。
顔も膝も汚している人形に、畑の手入れをしていた魔法使いが声を掛ける。]
……っ
[つい、いつものように逃げようとしてしまったけれど。
なんでもありませんと首を横に振ろうとしてしまったけれど。
部屋の机の上に置いてきた、あの綺麗な色の花たちを思い出して踏みとどまる。]
花をっ……探してます。
綺麗な色、の。できればピンクの花。
明るい、花がいい。
[相手はしばらく考えてから、魔道具の店の方へ向かう道を示してくれた。
人形は感謝をぼそぼそと呟くと、小走りに魔道具の店へと向かう。]
(31) 2025/03/13(Thu) 22:47:31

──学びの塔:魔道具の店近辺──
[魔道具の店に出入りする人々の動線から少し外れたところ、その周囲にある花壇の花一本一本を人形は見つめている。
赤、白、黄色、橙、桃色。
様々な色の花が揺れる中で、人形は一本の綺麗に開く花に視線を留めた。
手を伸ばす。
引っ込める。
花びらに触れる。
また手を引っ込める。
それから、店舗の入り口の前に立つ。
扉に手を伸ばす。
引っ込める。
それから、ぐっと拳を握った。]
(32) 2025/03/13(Thu) 22:47:49

あれ、魔法人形じゃん?
ほんとだ 何してんだろ
あの子何歳? だいぶ長い
教授の人形でしょ 十年ぐらい
何してんだろ
裸足じゃん 買い物?
誰か声かけたら?
(33) 2025/03/13(Thu) 22:48:03

[周りの声が、強化がなくても聞こえる。
人形は耳を塞ごうとしたがる手を握りしめて、懸命に気持ちを膨らませ、精一杯を振り絞って扉を叩いた。]
っあ……あの!
[動かない扉。返らない返事。
もう一度、小さく打ち付けても何も起きない。
懸命に膨らましていたものが急にしぼんでいく。
もう一度、声を張りあげることなんてできなくて人形の眉がへにゃと歪んだ。
そんな人形の前で、扉が開く。
いつの間にか隣に立っていた学生が、押し開けていた。
開ければいいんだよ、と言われて人形は相手を見上げる。]
あ……あり、がとう。
(34) 2025/03/13(Thu) 22:48:18

[中にはいると、店内の人の視線が集まる。
人形はゆっくり、一歩一歩、カウンターに座っている店主の元へと歩いて行った。]
あ、の。
か、花壇の花。一本、ほしい、です。
[固く小さい声でそういえば、博士よりも年嵩の店主は眼鏡の奥の目を丸くしてから微笑んだ。
どうぞ何本でも、と低いけれど温かい声で許可をもらって、人形は先ほど手を伸ばそうとしていた花の元へと駆け寄る。]
(35) 2025/03/13(Thu) 22:48:39

[人形はゆらと揺れている綺麗に咲いたピンクの花に手を伸ばし、そっと摘み取ると大事に大事に胸元に引き寄せる。
それは、記憶に朧げに残る魔女を思い起こさせる、明るい花だ。]
(36) 2025/03/13(Thu) 22:49:38

──学びの塔:人形の部屋──
[押し花にするやり方を習って(博士に魔法でちょっぴり手伝ってもらって)、人形は机に向かって何度も何度も文字を綴ろうとしていた。
白い便箋は、何枚も途中で線が引かれたりぐしゃぐしゃに塗りつぶされてしまっている。
切れかけていた万年筆のインクがますます霞んで、紙を引っ掛けてさらに文字がうまく書けなくなってしまった。]
……花、送ります。
あなたみたいな、花……。
[書くべき内容をぶつぶつ呟きながら、必死にまとめようとするけれど、人形は誰かに当てて長い文章なんて書いたことがない。
幾度も幾度も書き損じて、うまくいかないことが悲しくて、その度にもらった手紙を読み直す。]
(37) 2025/03/13(Thu) 22:57:59

[そうだ、花を入れるなら封筒が必要だ。
もらった手紙のような綺麗なやつがいい。]
店っ……あ、
[使い所がなく貯めていた小遣いを握りしめて部屋の外に出ようとして、とっくに月明かりの眩しい夜になっていたと気がついた。
気が抜けてしまった人形は、そのままぺたんと椅子の上に腰を下ろす。
一日中外に出て、知らない人とも何度も話して、今日はいつもと全然違うことばかりだったから。
ゆらと襲ってきた眠気に耐えられなくて、人形は小さくあくびをする。]
(38) 2025/03/13(Thu) 22:58:13

[月が窓から降り注ぐ。
机の上に散らばった書き損じられた便箋たちと、その上に突っ伏して眠る魔法人形を照らしながら、夜はゆっくり更けて行った。]
(39) 2025/03/13(Thu) 22:58:36

よ〜しよしよし!大変だろうとは思うけれどお前には期待しているからな。
ちゃーんと届けてくれよ。あ、もちろんもう1つの方も。
それじゃあ、気を付けて行っておいで!
無事に帰ってくるんだぞ〜!
[小さな贈り物を手紙と共に鳩の背中へ落ちないようにのせて。
真っ白な鳩を空へと放った。
自律飛行型の手紙は物品も共に送れるか分からずにとった方法だった。
もしかしたら魔法の手紙な訳だから、少しくらいのオマケは共に届いたのかもしれないけれど。]
(40) 2025/03/13(Thu) 23:06:19

[仔猫は走る。
時にはどこかの田舎で撫でられ、時にはどこかの街の中を。]
にゃーん
[そしてどこかの庭で、ゴロンと横になった。]
(41) 2025/03/14(Fri) 00:02:53

―― 一夜、明けて ――
[数多の星が降り注ぐ夜は深くなっても、
どこかで人の気配がしているように思える程だった。
願い事が叶うと言われる流星群。
同じように願い事を祈った誰かが、きっと、
近くにも、遠くにも、見えないところにも。]
(42) 2025/03/14(Fri) 01:32:02

[夜が明けてしまえば、
昨夜の光景が嘘だったかのように朝日が上り
羊たちの鳴き声が聞こえる。
いつものように届けられる物資の中には
毎回一人では持て余してしまう程の食料。
ありがたい供給に感謝をしつつ、
おや、と紛れ込むように落ちてきた誰かからの届け物。]
あらまあ……
可愛らしいプレゼントだねえ。
[見たこともないそれは、思わず目に留まるほど
婆婆の心を擽った。]
(43) 2025/03/14(Fri) 01:36:51

[便箋を鳥に乗せた後、曲がっている腰を
抑えるようにしてトントン、と痛む部分を突く。
徐々に動きがカ固くなっていく身体は
どうしても痛む箇所が増えていくもので
羊の世話をするのも一苦労ではあった。
けれど、あのヒトが遺したものはこの家と
彼が大事に育てていた羊だけ。
ふぅ、と大きな深呼吸して
働きに出る前に一つ休みを入れていると
先程の物資を運んだ若者が
忘れ物だと、慌てて戻ってきたようだった。]
(44) 2025/03/14(Fri) 01:51:36

おや、まだあったのかい?
珍しいねぇ、こんな辺境に済む婆婆のところに
まだ届け物があったなんて。
わざわざ、届けに戻ってくれてありがとうねえ。
[咎めるよりも先に出てきたのは感謝だった。
時折遊びに来てくれる子どもたち以外では
もう、誰かと話すことも少なくなってきてしまっていた。]
(45) 2025/03/14(Fri) 01:51:44

おや……、懐かしいねえ。
[手元の手紙に表情を緩ませる。
文字をゆっくりと指先で追いかけて一文字ずつ
目と指に刻むようにして辿る。]
(46) 2025/03/14(Fri) 02:00:08

[くふ、と思わず嬉しい笑みが零れる。
この村の中でも明るく賑やかな女の子が、
結婚を機に遠くへ引っ越していくのだと。
羊の毛が好きで遊びに来ていた女の子だったけれど、
羊よりも大切にしたい、好きなものが見つかりそうだと
耳打ちをするようにして教えてくれた。
遠くへ引っ越した後も、時折家族のいる村に戻り、
村の隅っこに住む婆婆の元へも新しい家族を連れて
あの子が好きだと言っていた羊を見に来てくれていた。]
(47) 2025/03/14(Fri) 02:25:25

[再び羊の世話を始め、終わる頃には昼をとうに過ぎていた。
届いた手紙は大事にスカートのポケットに折りたたみ、
今日はほんの少しだけご機嫌に鼻歌を歌う姿も見えた。
夕方には日が落ちてしまうから仕事はそこまで。
1人分の食事を作り、眠くなるまでは揺り椅子に座って
揺れる身体を楽しみながら、暖炉の前で
編み物をして過ごす夜。
まるで、昨日の流星群が嘘だったみたいに
いつもどおりの、何でもない日。]
(48) 2025/03/14(Fri) 02:25:59

[……はた、と思い出す。
ポケットにしまわれたままの手紙。
ことり、と椅子の脇のテーブルへ網掛けの毛糸を置き。
たくさんの便箋をまた、一枚手に取った。]
(49) 2025/03/14(Fri) 02:26:09

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