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博士、わたしは。
もっと勉強して──いろんな人と、会いたいです。
それから、その人たちの役にたって……博士?
[人形の話を穏やかに聞いていた博士の顔が険しくなる。
その手が人形の肩を掴んで、ミシと音を立てる。]
なんで──……だって、勉強は
違います、ここを出る、なんて、いってな
や、やめて博士……
[博士の爪が人形の肌に食い込む。
人形の肌はいい、魔法が常にかけられている人形の肌はすぐに治る。
でも博士の爪はダメだ。折れたら治るのに時間がかかる。
だから必死に止めようとその手を掴むけれど、人間の子供相応の力しかない人形では成人男性の力にかなうはずもなかった。]
[どうしてだか、助手の人は動いてくれない。
以前言っていたように、人形のことが邪魔なのかもしれない。
このままここで壊れてしまえば、いいのだろうか。
それは博士のためになるということだろうか。]
…………。
[人形は、迷う。
でも──でも、人形は、人形の自律思考は思ってしまう。
出した手紙の返事を知りたいと。
この塔ではないところの人の話を、もっと聞きたいと。]
[もう一度助手を見ても動く様子はなかったから、人形はいまだに己の肩を抑えている博士の手に自分の手を重ねた。
くいと袖を引いて、彼を見上げる。
頑張って顔を歪めて「痛そう」な顔をした。]
いたいよ、パパ。
[その一言で力が緩んで、博士の膝が床につく。
体が倒れないように駆け寄れば、血のついてしまった指先で抱きしめられた。
型番であるYU-K110でも、もちろん魔女がつけてくれた「ユキナ」でもなく。
この外観のモデルとなった少女の名前を呼びながら、博士は人形を抱きしめる。
またか、と助手が顔をしかめて呟く。
きっとこの人の方が正しいのだろう、人形は間違っているのだろう。
それでもこれ以外に、人形は思いつけないのだ。
──正しく思考できなくてごめんなさい。
博士の役にも立てなくて、ごめんなさい。]
わたしは
娘の代わりに作られた人形
娘の代わりもできない人形
博士の役にたたない人形
誰の役にもたたない人形
ごめんなさい 博士の役に立たなくて
ごめんなさい 博士の娘にもなれなくて
ごめんなさい 助手の人たちの役に立たなくて
ごめんなさい 誰かの役に立ちたいと願ってしまって
──人形と博士のむかしの話──
[それは西の魔女が魔法人形にたくさん話してくれた少しあと。
彼女のおかげで語彙が大幅に増加し、話せるようになってきた人形を前に博士が突然錯乱した。
周囲の言葉を理解できるようになってきた人形は、人形のモデルが博士の死んだ娘と知った。
”パパと呼んでくれ”
その願いに、想いに、幼児のように純粋な自律思考は反応した。
ありったけの「妥当な反応」をかき集めて、人形は博士へ手を伸ばした。]
どしたの、パパ。
なかないで、パパ。
だいすきよ、パパ。
[……きっと、それが良くなかった。
博士は時折、人形を娘だと間違えた。
一眠りすれば、あるいは何かをきっかけに正気に成るけれどその間の博士はまったく「正気を失っている」状態だった。]
[自律思考は考えた。
どう呼びかけたって正気ではない博士は「娘」以外に反応しなかった。
「娘」がいないと博士はひどく狼狽した。
隣にいる方が早く治った、だから、人形は──それがいいと、結論づけた。
だが博士のごく近くにいる人たちは違った。
人形がいるからダメだと言った。
人形がいなければ過去になるはずだったと言った。
だが人形が姿を見せなくなると博士は懸命に人形を探すのだ。
それを、聞かないふりが、できなかった。
だって人形は。そのために作られた──のでしょう?]
[人形は博士のために作られた。
人形は博士の役に立てなかった。
だから人形はなんの役にも立てない。
役に立たない道具は壊れていい。
そこに至るのに難しい思考は必要ない。
それでも、人形は誰かの役に立ちたかった。
誰かの役に立てたのなら、博士の役に立てなくても、
人形は──ここに在れていいモノになれると思うのだ。
壊れなくてもいいと、思うのだ。
わたしは こわれたくないと おもう]
―カルカイト新聞社・窓辺にて―
え?僕がここに居るのが珍しいって?
やだなぁ、たまには進んで雑用をしようってだけですよ。
お忙しい諸先輩方に代わって速報をしっかり捌いたりしようという心遣いなのに!
[新聞社に宛てられた手紙はこの窓から伝書鳩が持ってきたり、魔法の手紙が入ってくる事が多い。
本来なら手紙の受け取り、振り分けなんていう簡単な作業は一番新人の仕事だ。
入社して暫く経つ俺がやるような仕事ではない。
なら何でここに居るかって?……事情があるのだ。
うっかりというか、なんというか。俺宛ての手紙がこの新聞社に届くような形にしてしまったのだ。
なんとしても誰かに見られる前に回収してしまいたい。
来るかも分からない物を待つのは性に合わないが、先輩に見られたらそれはそれで恥ずかしいので理由を作ってここに居る。
……今度から俺のデスクへ直接来るように鳩にお願いしよう。
いや、それならいっそ自律飛行型レターセットを買った方が早いか?でもちょっとだけ高価なんだよな…あれ。
うんうんと悩みながら鳩が帰ってくることを期待していれば。
ひらりふわりと目の前で蝶が舞う。]
あれ?
[手紙と鳩が別々に帰ってくるパターンか?と首を傾げながらも手に取れば、それは封筒へと形を変える。
……色も違えば、丁寧に封蝋までしてある。
宛先はどうやら新聞社のようなので、中身を確認してみる事にした。
内容は自分だけでは判断が少し難しい話で。]
せーんぱい!ちょっと相談なんスけど……
[中身を掻い摘んで説明すれば顎に手をあて悩む先輩に、一言。]
話題性はあると思いますよ?
面白そうだし、なにより僕これ興味あります。
[まぁ確かに、と先輩は頷いた。ただし、担当はお前なと言われてしまい。]
んげぇ!僕こういう仕事やった事ないですよ!?
しかも相手が相手だし……失礼があれば不味くないですか?
…あっハーイ。分かりました。詳しい話聞いて調整します、ヨロコンデ。
[任された仕事の大きさに多少慄きながらも、先輩が編集長へと話はつけてくれるらしい。
その辺りをお願いしていいのであれば、と。会社が良く使う便箋を引っ張り出し返事を書き始めた。]
親愛なる西の魔女 フローラ様
手紙をいただきありがとうございます。
本件を担当させていただく、ライト・ベルターリと申します。
先ずは弊社の短編小説コーナを読んでいただきありがとうございます。
ご提案いただいた内容を編集長と協議したところ、是非とも細かい部分を詰めて前向きに検討したいとの事でした。
(人狼少女という部分、各地の観光名所を織り交ぜての進行は面白い話になりそうだ、との事でした。)
実際に人狼少女が訪れた場所に読者も行ってみたいと思えるような話を書いていただければと思います。
つきましては締め切り等細かいお話しをさせていただければと思います。
とはいえ実際にお会いするのも難しいかと思いますので、このまま手紙のやり取りにて進めたいと考えていますが
フローラ様はいかがでしょうか。
前向きなお返事をお待ちしております。
カルカイト新聞社
シルワ帝国
ライト・ベルターリ
[署名の上に新聞社の社印が赤いインクで押されている。]
……これでよし、っと。
返信用封筒付けてくれてるの有難いな。
こちらも付けておくか。確か〜この辺に〜あった筈!
よし、これも入れ込んで。
[窓辺に立って、封筒に息を吹きかければ。
クリーム色の蝶々が西へと向かって飛んで行った。]
いつ見ても不思議だなぁ……この魔法。開発したの、西の魔女だっけ。
[俺には魔法の才能が無いに等しいから、感心と尊敬の念を抱きながら見送った。]
[さて一仕事終えたし、お茶でも淹れて休憩するかと息をついたのと同タイミングで。
白いふわふわした物が俺の顔面を目掛けて飛び込んで来た。]
ぐはっ!?!?!なに!?
って、ペペか〜!お帰り、長旅ご苦労さま!
[腕に抱えればその伝書鳩は間違えなく封筒を持っていて。
往復は流石に辛かったか、急いで鳥かごに入れて水と餌を与える。
空腹だったのだろうか、周囲に餌をまき散らしながら食べている鳩……ペペに愛らしさを感じながら
青い鳥の封筒を開けた。
ゆっくりと文字を追って、たまに驚かせられたり、笑ったり。
そんな穏やかなひと時を過ごし。
先程仕事で書いた手紙とは別の便箋を自分のデスクから取り出した。]
学びの塔
自律魔法人形YU-K110改め、ユキナ様へ
素敵な手紙とプレゼントをありがとう。
こういうお守りは自分では買わないからとても新鮮だ。
大切にデスクに飾らせて貰うね。
ユキナちゃんの事も、住んでいる場所の事も教えてくれてありがとう。
自立魔法人形が身近な存在として居ないから、こうやって手紙のやり取りをするのも不思議な感じだ。
今年で10歳なんだね、色々な物事に興味関心を持つ年齢かな。
ブーツも大事にしているんだね。直しながら履いているのかな。
サイズ合わなくなったりしないものなの?
なんだか想像が及ばない不思議な場所に住んでるんだな…
お互いの環境が違い過ぎて、話を聞くだけでも楽しいや。
僕が住んでいる場所は遅くまで明かりがついているから中々暗くならい。
遅くまでオフィスで働いている人だったり、その人達相手に商売している飲食店だったり。
その中の1つで美味しいパフェを出すお店があるんだけれど、ユキナちゃんは甘い物は好きですか?
新聞は書いたりするんだけれど、大きな出来事についてはあまり書かせて貰えてない。
街の人達の声とか、街で流行っている物についてが多いかな。
端っこに小さく掲載されるような。
前回君に贈った花、青い薔薇で合ってるよ。
僕が気に入って通っているカフェがあるんだけれど、その目の前にフラワーショップがあってね。
そこで星降る夜に合わせて売られていたから、買ってみました。
花言葉も素敵なので、もし興味があれば調べてみてね。
君がくれたアミュレットと違って魔法はかかっていないけれど、気に入ってくれたら嬉しいな。
南の羊飼い バーバは、 自律魔法人形 ユキナ を投票先に選びました。
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