37 【手紙村】あなたの願いは叶いましたか (2025/03/19(Wed) 07:00:00 に更新) RSS
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【秘】 自律魔法人形 ユキナ > 記者 ライト
あまいのは、好きです。
食べるの、ふわふわするから。
博士がときどき、ケーキを一緒に食べくれます。
好きだから、って言って。博士は、好きじゃないけど。
ぱふぇ、はわからないです。
ケーキと似ていますか？
ライト様の新聞、読みたいかったです。
はしっこ、探してみる。
ルーナでも、読めますか？
シルワ帝国だけですか？
博士、外の人にお土産頼む。頼んでみます。
【秘】 自律魔法人形 ユキナ > 記者 ライト
贈り物、手に入らなくて。
代わりに花の絵を描きました。
花は好きです。色がきれいで。
一番好きな色は、青です。わたしは、青。
ピンクじゃないです。でも、ないしょにします。
青いバラの花言葉、調べました。
きせき、も。夢かなう、も。すてきです。
きせき、おきたらきっと、行けます。
あそびにいったら、明るい夜をみせてほしい。
よい夜、もいいことばですね。
まだ夕方ですけど、博士は寝ています。
起きたらちゃんと、博士だといいと思います。
ユキナ
【墓】 自律魔法人形 ユキナ
[手紙を鳩に託して送り出す。
白い鳩は、どこまでも夕暮れの空を飛んでいく。]
……わたしも、飛べたら
遠くに、いけるかな。
[明るい夜も、海も、蒸気機関車も。
そういう「みたことのないもの」をみたいという心は、この十年はさほど揺れ動かなかったのに、今となってはぐらぐら動き出してしまうのだ。]
【墓】 自律魔法人形 ユキナ
[──そうして、それは無理だと思い出す。
魔法人形は学びの塔の敷地の外には出られないのだから。
鳥になったって、遠くにはいけない。
その思考に至るたびに、苦しくなる。]
……よかった、のにな。
博士の役に立てる、なら……
[外のことは知りたくはあっても、行きたいなんて思わなかったのに。
誰かの役に立つのなら、ずっとここにいることに疑問も不満もなかったのに。
急速に発達する自律思考は、一枚一枚、人形にそれまでなかった思考を刻み続ける。]
仔猫 チビ
[仔猫は不思議な力を持っていました。
仔猫はどこにでもいける、いけてしまう猫でした。
にゃあと鳴けばシルワ帝国へ。
にゃーと鳴けばルーナ王国へ。
にゃおんと鳴けばソル共和国へ。
にゃんと鳴けばマーレ連合国へ。
みゃーと鳴いて、なもなき小さな国へ。]
仔猫 チビ
[けれども仔猫の本当に行きたい場所はたった一つでした。]
にゃあ、にゃああ、みゃああああ
[やっとやっと辿り着いた
ふかふかの親猫の腹に顔を埋めて。
兄弟猫たちの柔らかい舌で舐められて。
長い旅をしてきた仔猫は
ようやく丸まって寝息をたてました。]
記者 ライト
[託した手紙が蒸気機関車に乗って帰って来た。
ホームを行き交う人のざわめき、新聞や軽食を売る声、発車を知らせる汽笛と笛の音。
そんな喧噪を聞きながら手渡された手紙を開ける。
内容を一通り読めば、肩の力を抜くように息をついて。
二度、三度目を通してから困ったように笑った。
頬っぺたを掻きながら駅を抜けると向かうのは雑貨屋。
ちょっと多めに魔法のレターセットとラッピングされたチョコレートを購入する。
一人で食べるには少し多めの量で、誰かと分けて楽しめるように。
そして新聞社へと戻りレターセットとお気に入りのインクを用意してから書き始めた。
途中でふと、手が止まる。]
記者 ライト
……期待されるほど素敵な夢では無いんだよな。
でも書いた方が少しは励みになるのかな。
[夢も希望も無い事はできれば書きたくない。
せめて、文字上では誠実に素直でありたい。]
失望させたくは無いんだよな、難しいなぁ。
【秘】 記者 ライト > 農家の娘 ペコ
南の農家の優しいお姉ちゃん ペコちゃんへ
お返事ありがとう。返ってくるとは思わなかったから少し驚いた。
元気にしてるかな？ペコちゃんもつられて落ち込んでたりしてない？
僕は素敵な形でお手紙を貰えた事、とても嬉しく思います。
今回は渡したい物もあったので蒸気機関車任せではなく、レターセットを使いました。
驚かせてしまったらごめんね。
弟さん、ちょっと心配だね。
でも傍に居てくれる人が居る限りはきっと大丈夫。
僕が落ち込んだ時に食べる大好きな美味しいチョコレートを同封します。
弟くんと分けて是非食べてね。
これで少しでも気が紛れると良いんだけれど。
【秘】 記者 ライト > 農家の娘 ペコ
ペコちゃんは周囲を見れていたらと書いていたけれど
そこは大丈夫だと思うよ。
男の子って天邪鬼だから、ペコちゃんが気がついたとしても
逆に言い出せなかったかもしれないし。（僕だけかも）
弟くんからしたら、きっと気にかけてくれている事だけで充分かと思います。
優しいお姉ちゃんが味方についてくれるなんて、弟くんちょっと羨ましいな。
少しでも力になれて良かった！また何かあったら気軽にお手紙ください。
村の事とかでも良いし、ペコちゃんが話したい事でもなんでも。
案外、知らない相手の方が話せる事って多いからね。
【秘】 記者 ライト > 農家の娘 ペコ
追伸
僕は蒸気機関車が好きなんだ。
色んな荷物を、人を、思いを運んで様々な景色を見る事が夢だった。
運転手のお兄さんが着ていた制服も、かっこいいと思わない？
ペコちゃんの方へも、いつか遊びに行けたらいいな。
[追伸と書かれた文字は本文よりも震えていた。
同封されていたのは青い包み紙でラッピングされたチョコレート。
2人で分けても少し多かったかもしれない。]
記者 ライト
[しっかりと封をしたそれは、少し厚みがあり。
この状態で届くかどうか少し不安だったけれど、ざっくりした場所しか分からないせいで鳩のペペに任せる訳にもいかない。
どうか、無事に届きますように。
息を吹きかければ、ひらりふわりとクリーム色の蝶へ変貌し
新聞社の窓から飛び立った。]
記者 ライト
……書けないよなぁ、俺の願いは叶いませんでした、なんて。
そんな夢も希望も無い事。
これから頑張って進んでいく子達には口が裂けても言えない。
【秘】 南の羊飼い バーバ > 農家の娘 ペコ
［以前も届いていた手紙は、今度は
青空の下で草原を駆け回る馬に変わっていた。
月日が過ぎたことを思わせるような色合いに目を細める。
前回に書いたときよりも、おぼつかない指先で
文字が震えないようにゆっくりと記していく。］
親愛なるペコへ
［書き出しは、やはり前回と同じ。］
【秘】 南の羊飼い バーバ > 農家の娘 ペコ
ペコのおうちでは仔馬が生まれたんだね。
おめでとう。クリーム、いい名前だねぇ。
それだけで白い毛並みの馬が目に見えそうだよ。
トットは勉強をしたいのかい。
いいことじゃないか。
反対してしまうのはもしかしたら、
おうちのことを手伝ってくれるのを
望んでいるのかもしれないねえ……。
【秘】 南の羊飼い バーバ > 農家の娘 ペコ
トットも連れて、いつでもおいで。
……そう言いたいところだけれど、
あまり先の話だと、チェリーパイを作れなくなりそうだ。
チェリーパイが冷めないうちに
二人がきてくれると嬉しいよ。
それこそ、七色に輝く星の中にあったような
赤い色をしたチェリーをたくさん乗せようね。
あれだけたくさんの流れ星が流れたんだから、
ペコのお願いもきっとたくさん叶ったことだろうね。
羊たちもペコが来るのを待っているよ。
【秘】 南の羊飼い バーバ > 農家の娘 ペコ
［手紙を書き終えると、編み終えていた
2人分の色違いのマフラーを添える。
一時的に変わった届け先を最後に記して、筆を止めた。］
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