[こうして(この吸血鬼にとっては)不可解で
相当な焦りを伴う起床を経た訳だが、
ベネディクトの姿が寝室に無かったこと自体は
この時の時刻を思えば、懸念する事柄ではなかった。
この日は、ここからは遠方の都市で
アンティークの古物市場が開かれる日。
かの古美術商はその市場に向かうため、
早朝には出立する予定だったのだ。]
「ヴィブラトさんにも一緒に来てほしかったっすけど〜…
そうっすね、確かにちょーーーっと、
昨日手が回らなかった分のツケが溜まってるっすよね……」
[……という店主判断で、この “お手伝い” の
居残りが決まったのは昨晩のこと。
今日はこのアンティークショップ――
「宵月小堂」の定休日ということもあり、
ヴィブラトはひとり、事務作業や商品のリペア、
その他細々とした雑用や家事に向き合うことになる。]