26 ― 境界の先への手紙 ― (2024/09/22(Sun) 10:00:00 に更新) RSS
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ああ、カラヴェラスやハロウランドの月もまた、
それぞれに美しいものだよ。
カラヴェラスの月はマリゴールドが如く黄金に輝きながら、
数多の花の色にも彩られ、どこか悲しげながらも陽気だ。
ハロウランドの月も黄金色だが――こちらは少しほの暗く、
魔性のものを惹き付ける紅さも滲ませる美に満ちている。
まあ両地とも、わたしが実際に赴いたことはないのだがね。
(4) 2024/09/20(Fri) 10:25:15
越境貿易商 マーチェンドは、メモを貼った。
(A1) 2024/09/20(Fri) 10:44:37
今日は朝から騒々しい。
研究員が慌てる中、ベアーはマチェットにぶんつーのルールをあれこれ聞いていた。
「なあなあ、なんでみんなあちこちはしりまわってるんだ?」
マチェットはゴノレウと呼ばれる生き物のキメラだ。
人間よりも遥かに大きく力強く、そして賢く心優しい。
実験体たちからも人間からも頼りにされる存在だ。
『どうやら大規模なステアが起こるようだね』
「すてあ?」
『そう。そうだな、前に嵐というものを教えただろう?
雨がいっぱい降って強い風が吹く……というやつだ。それが混沌で起こる』
それが何故人間たちが大慌てになるのかベアーにはピンと来ない。
「それになるとみんなはしりまわるのか!」
『そう、定期船が来なくなるからね。
定期船が来ないと他のリージョンとのやり取りができない、ベアーに関係するとしたら……そうだな、お菓子が手に入らなくなって文通もできなくなる。
と言ったところか』
(5) 2024/09/20(Fri) 10:52:28
文通が出来なくなる!それは一大事だ!ベアーはしょんぼりしてしまった。
「ぶんつー……できなくなる……それはゆゆしきじたいだ……」
なお ゆゆしきじたい の意味は分かっていない。
『そうだね、だから研究員たちは定期船が来れなくなっても大丈夫なように準備しているんだ』
説明されてようやくベアーは今のリジェットXの現状を把握した。
「おれのてがみ、とどくかな……」
『今日の定期船に乗せた分は届くだろうけど……、明日以降はステアが治まるまで届かないだろうね。
返事が来たとしても受け取れない』
ベアーはどんどんしょんぼりしてしまう。
そのしょんぼりさ具合に逆にマチェットが慌てる始末だ。
(6) 2024/09/20(Fri) 11:00:15
ところで、今はもう滅びた、俺の故郷の話なんだが――…
多分俺は、そのリージョンで生まれたって訳じゃない。
物心ついた時にはもう既に、俺はそのリージョンに居たんだが……。
俺は旅先で拾われた孤児としてそのリージョンに連れて来られたって話で、実際の出生地が何処かも、生みの親が誰なのかも不明なんだとか。
辛うじて判明しているのは、種族はひとまず人間だっていうことと、服に括りつけられていた覚書から、名前は「馬茜渡」らしいってことくらいだ。
(7) 2024/09/20(Fri) 11:06:24
『ステアが治まれば定期船は来る、だからそれまでの辛抱だ』
というものの事前観測の時点で大規模と言われるとレベルだ、数週間あるいは数か月治まらないということもあり得るし、過去にも年単位で治まらないステアが起こったこともある。
「おれ、ぶんつーできないのやだ……」
人間の子供とさして変わらぬベアーにはそれが辛抱ならないのか、ついには泣きだしてしまった。
これにはマチェットも泣きたくなってしまう。
どうにかできないか……考えに考え抜いてマチェットは閃いた。
『ベアー、招待状を穴に入れよう』
そう言って便箋とペンをベアーに差し出した。
(8) 2024/09/20(Fri) 11:13:22
出生地が不明で親の素性も不明とは言ったって、俺にとっちゃ人生のスタート地点は間違いなくあの場所で、幼少期をずっとそこで過ごしてきた訳で――。
当然のように、俺の“故郷”はそこになるって訳だ。
まあこの“故郷”、どでかい企業が建設した研究用の人造リージョンでもあったんだがな。
身寄りのない孤児がそんな研究機関に連れてこられるだとか、下手したらそのまま実験体にされていた可能性もあったんじゃないかとも考えちまうが……まあ、流石にそんなことは無かったって訳だ。
少なくとも俺は、研究対象ではなく未来の研究者として、あの場所で育てられて、こうして無事に大人になっている。
(9) 2024/09/20(Fri) 11:16:09
穴、この施設が研究所だった頃に使われていた廃棄孔だ。
中に入れたものは混沌に排出される。
廃棄物はそのまま混沌を漂うものもあれば、どこかのリージョンに辿り着くこともある。
『私も最初の文通相手は穴に投げ入れた手紙がきっかけだった。
何十通も投げ入れて返事が来たのは3人。
だから、招待状を作って穴に入れて……そしたら手紙を拾った誰かが、ステアが治まったら来てくれるかもしれないだろう?』
マチェットの苦肉の策だった、だがベアーはその作戦がいたくお気に召したのか、ペンをとって便箋に向かい始めた。
(10) 2024/09/20(Fri) 11:19:56
「しょーたいじょーってなにかけばいいんだ?」
泣いた子供が泣き止んだ。
ニコニコと何を書けばいいのか首を傾げ始めたのだ。
『そうだね、自分の名前とどこに来てほしいかと……来てくださいという気持ちをベアーなりの文章にすればいい』
こうして二人で招待状を書き始めた。
便箋を使い切っても、別の便箋に二人で招待状を書いた。
そうして施設内から瓶を集めて、瓶以外にも混沌に耐えられそうな容器に招待状を入れて、二人で穴に“招待状”を投げ入れた。
(11) 2024/09/20(Fri) 11:26:14
……つったって俺、別に研究者ってガラじゃねぇしな!
っていうのが幼心にも分かってたんで、とりあえず研究機関での教育は受けながらも、結果として俺は研究者にはならずに故郷を出奔するに至った。
俺を拾って機関に連れてきた研究者――養親ってことになる――には唖然とされたが、まあチエンドゥーが望むなら仕方ないってことで、その人は俺が外のリージョンへ旅立つことを許してくれたんだった。
ああ。狭い研究室に籠ってるより、話に聞く“混沌”の広さを知りたい。数多のリージョンを渡り歩いて、見たことも聞いたこともないモノに巡り合いたい。
そんな意思が、俺を“混沌”を翔ける商人にしたのさ。
(12) 2024/09/20(Fri) 11:26:37
……記憶の中の何処にもない出生地だとか親の顔とか、
なんだかんだで気になっていた、っていうのも、
多分、俺の中にあるだとは思うんだけどな。
それでもあの“故郷”こそが俺の育ってきた場所で。
その場所の同窓の面子こそが、俺にとっての同郷の友人で。
ひとりきりの俺を拾ってくれたあの人こそが、俺にとっての親で――
(13) 2024/09/20(Fri) 11:31:36
「へへへ、だれかきてくれるといいな!」
吸い込まれないようにそーっと穴を覗くベアー。
この中のいったい何通が拾われるのか、拾った人の何人が招待状にリアクションを返すのか、そのリアクションにここを訪れる可能性は何%か。
マチェットは厳しい現実をベアーに告げることはしない。
いつ終わるかわからないステアの中、ぶんつーを楽しみにしているベアーを悲しませることはしたくなかったからだ。
『ステアが治まるのが楽しみになって来ただろう?
……さあ、ベアー。みんなの手伝いをしようか』
「おう!」
マチェットはベアーの手を引いて穴のある部屋から立ち去った。
(14) 2024/09/20(Fri) 11:32:40
―――…俺の親になってくれたその人は、もう、いない。
風の便りに聞いた。関係機関への問い合わせでも知った。
俺の“故郷”を廃棄に至らせた例の大事故で、
あの人もまた、不帰の人になったのだと。
(15) 2024/09/20(Fri) 11:37:13
爆発爆散 ベアー から "トラッシュ" イオニス へ、秘密のやり取りが行われました。
爆発爆散 ベアー から 疼躊化葬 コルデリア へ、秘密のやり取りが行われました。
爆発爆散 ベアー から 煙霞山 山主 蓬儡 へ、秘密のやり取りが行われました。
風が吹く。
雲は流れる。
泡揺れる。
漣の夜に。
潰えて消える。
(16) 2024/09/20(Fri) 12:08:20
岩場の隙間に見つけた小さな洞窟に
泥の身体を押し込み眠る。
融解した身体は
狭く暗い場所がよく似合う
健気に岩へ取り憑く苔と同じ。
無欲に生命を蔓延らせる菌糸と同じ。
形を留める必要もなく、ただ隠れて眠る。
本能的に。無理性的に。
眠っているときはヒトではないから
その胸に、誰かの亡骸の物語を抱いて。
それをひしと、守るように。
(17) 2024/09/20(Fri) 12:18:31
泥の男 ガァドは、メモを貼った。
(A2) 2024/09/20(Fri) 12:33:57
ごぼり。ごぼり。
磯の蟹が集まって泡を吹いて遊び始めた頃。
同じように岩肌の隙間からゴボゴボと音を立てて
泥の体が目を覚ます。
土の地面に爪を立てるように
ガリッっっと深く前足をだして
ずる ずる ずるり。
べちゃり。ぐちゃり。ぐにゃり。
おぞましい音を立てて不定形が外に出て
ゴポゴポと音を立てて形を成して
ばちり、と銀の目を開く。
(18) 2024/09/20(Fri) 12:41:55
「 ── えほ、っ、 ゴホッ…… 」
その日はじめに咳いたのは、きっと土煙をひどく
吸ってしまった、それだけの理由では
なかったと思います。
私の居住地──その建物の地下のカタコンベ。
其処の掃除から私の一日は始まります。
ひとりひとりと顔を合わせてとまではしませんが、
私にとってはそこに居ります彼らすべて、
既に馴染みの面子というものです。
幼き頃には酷く恐ろしく近づけなかった筈なのに。
(19) 2024/09/20(Fri) 12:45:13
『……………』
突然現れた人影に、
周りの虫達が必死になって逃げ出し始めた。
からだのなかにいてくれてもいいのに
ムカデ、バッタ、ダンゴムシ。
でかいので言えば、カブトムシなんかも飛んでいく。
泥の男は周囲を見回し
まだこの世界が夜であることを確認する。
胸の中に抱きしめていた猫箱を開き物語を読むには、
ここでは少々薄暗い。
その手に鞄を下げ、
ふらりふらりと明るい方へ。
漣の小浜。誰かの声が流れ着くところへ。
(20) 2024/09/20(Fri) 12:46:16
本日まだ発言していない者は、 "トラッシュ" イオニス、 煙霞山 山主 蓬儡、以上 2 名。
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