どんな人、か。そうだな……ただただ優しかったよ。
俺が冒険に赴いても、只管帰りを待ってくれた。
辛抱強いのが、良くなかったな。
[話始めるのに時間は掛からなかった。
男の中ではすでに、起こってしまった事象。]
長期で家を空けていた間に、病で死んだ。
家で、俺を待ち続けて。
この店はミラが始めたんだ、帰りを待つ間に働いていたいから、と。
[店名に自分の名前を使うことを提案したのは男だった。
その名の意味を込めて。
自分の名が看板になることに、恥ずかしそうにしていたのを覚えている。]
もう、5年以上前だ。
[写真と同じように、過ぎた月日は記憶を色褪せさせる。]