[彼女はいつだって誰かに恋をしていた。
太陽が朝になれば昇る程に当たり前だった事が、また一つなくなってしまう。
いずれは彼女もいなくなってしまう。
親しくしていた同胞との別れは、何度経験したって慣れないものだ。]
「そんな顔しないの。
まだずっとずーっと先の心算だけど、私が枯れたら、一つ持っていってね。
文ちゃんが拾ってくれるまで遺しておいてあげる。」
[そう言って笑う彼女に、添木は肯く事しかできなかった。
きっと今回声が掛かったのは、それを話す為でもあったのだろう。
数百年来の付き合いである付喪神が己を見送ってくれるのだと、
己がいなくなった先も人間界で生きていくのだと。
その信頼が添木の胸を痛ませた。]