[医師は遠くを見ながら話し続ける。]
「彼らは、貧しいものが無策で死んでいくことに、誰も気づきもしないことに怒りを覚えて、金持ちが集まるホテルや観光地を狙ったそうだ。
物理対物理の争いなど、金がある方が勝つに決まっている。
実際戦争にもなっていない。
ただ今は、政府が彼らを掃討しているだけだ。
きれいに焼け野原にしているだけだよ。
…なぜこんなことをするんだろう。
愚かだ」
[視界の前の方で遠くを見ていた女性が突然泣き崩れた。
隣に居た病院の関係者と思われる人影が彼女を支え、そして自分たちの横を通り過ぎ、階段へと向かって行った。
気が付けば、闇夜の中、街の高い場所、バルコニー、至る所で人々が攻勢をかけられている土地の方を眺めていた。
歓声の一つも上がらなかった。
皆黙って、同じ方を眺めていた。]