― 夏・八月/海辺 ―
[花瓶に活けられたパンジー>>1:187が揺れている。
実際はもう園芸部の花に変わった>>1:165上で、
夏休みに入った以上、器の中は空かもしれない。
だからこれは結月の記憶だ。
それを示すように花は次第にフェードアウトして、
所謂"いい感じの枝"が柔らかい砂に立てられた様子を映した。
枝を握りしめた手が動き、砂の上に線を引く。
そこに絵が描かれたのはおそらく先程の記憶の花だろう。
とは言っても、その絵姿はお世辞にも写実的とは言えない。
弘法は筆を選ばないが、結月はどこにでもいる一般人だった。
彼女は夕日に染まった顔を上げる。
視界の端にはテトラポット、
ブーゲンビリア>>1:172はあっても遠く、夕日に紛れているか。]