—海岸—[風は相変わらず強いながら、比較的波穏やかな朝。砂浜には貝殻を拾う薬師の姿があった。朝にこうして洗濯粉の材料やらを採るのはほぼ日課のことであるから、珍しい光景ではない。しかし今朝の薬師はどこか心ここにあらずの顔をしていた。海水に濡れようともいつも通りに服は着込んでいて。ただ足元だけは裸足だった。裸足の足に傷はない。生白い足の甲を海水と砂の粒が滑っていった。]