[身体を折った結月は小さい。
終点に辿り着くと上半身を持ち上げ、端まで伸びる。
右から左へ、全身をめいっぱい使った一閃。
踊っているようであったし、
ただ、めちゃくちゃに暴れているようでもあった。
根岸は体幹がいい。
日々の訓練の賜物であるが、今はそれが必要で邪魔だった。
多少無理な体勢は倒れないように堪えて、
何てことない瞬間に、力のない子どものようによろけて見せる。
手をうんと伸ばして、足をぐっと前に進めて。
決してこじんまりとした絵にならないように。
言葉がない分、つまらない時間だと思わせないように。
この画がどれだけ使われるのかは分からないけれど、
根岸は幸阪結月として夢中で身体を動かした。
途中、枝が折れてしまっても、
結月は止まることなく砂に線を引き続けた。]