[「お嬢さん」は黒菫を描いた白磁のカップに口を付けたまま、紅衣の語り手を見つめていた。
老婦人の顔をした語り手は、穏やかな面持ちのまま、話を続ける。]
ええ。わたくしたちは永遠の存在のようでいて、
ふとした瞬間に終焉を迎えてしまうこともある。
……たまに真の不死者がいるとかいないとか、
そんな噂が囁かれることもあるけれども。
[「いるの!?」と咄嗟に口にした「お嬢さん」の手からカップが滑り落ちかけた。
辛うじて一滴の茶も零さずに済んだ若き吸血鬼の焦りぶりに、老生の吸血鬼は微笑ましげに声を上げてみせる。
さて、そんな「噂」として語られるのは一体誰のことか――そんな含みでも持たせたかのようなくすくす笑いを零した後、プラルトリラはさらに話を続けていく。]