>>2:85ジズ
[それから。
歌う女達が裏へと引っ込み、自分をこの宿へ導いてくれたあの子が普段通りの給仕に戻った後は、酒場の騒がしさを尻目にしてさっさとあてがわれた部屋へと戻った。
あの使用人の彼女は、彼女自身にも言われたように、自分のこれまで話すことの多い種類の人とは、違った人種に思えた。仕事熱心なのに、客に対して時にはどうでもよさそうにも見える態度を取ったり。
かと思うと、ステージ上の女達に興味を持ったリナに、あからさまに興味を寄せていたり。]
……ああ、xxx……、あなたと遊んでいたときも、こんな気持ちになったことが何度もあったわ……。
[今や自分の物でなくなった『お人形』の名前を呼んで、そう独り言を溢す。その顔には、寂しそうにも、愉悦にも見える、乾いた感情が浮かんでいた。
扉を開け、廊下へと出て、彼女を探す。果たして何処かにいただろう彼女の姿を認めると、人懐こく[そしてそんな態度を彼女が嫌がるかもしれないという期待もしつつ]近寄って、小さく声を掛けた]
……ねえ、ちょっと部屋に来てくれない?
……ベッドの下に、大事な腕輪を落としちゃったみたいで、暗くてよく見えないのよ。