[でも――どこにでもあるような幸せな家庭ってやつは
ボクが7つの時に脆くも崩れ去ってしまった。
いつからか夫婦喧嘩の絶えなかった両親。
とうとう母さんはボクと父さんを残して
どこか遠くに行ってしまった。
ちょっとした魔法が使えて、村で錬金術を利用して
雑貨屋みたいなことを営んでいた父さんは、
魔法を教えながら男手ひとつでボクを育ててくれた。
そのことには勿論感謝しているけれど、
父さんがわざわざ町まで仕事だって行って向かって
朝に香水の匂いをさせて帰ってくること、ちょくちょくあって。
知らない女の人と腕を組んで歩いてたこと。
狭い村だから噂が回ってくるのも早くって、ボクは知ってる。
そのことが直接的な不仲の原因になったのか、
そこまではもう分かんないけどさ。]