―夜:下水道―「やぁ、グリッサ。おはよう。」[眠るようにその場に横たわっていた美しいおとこがゆっくりと紅い瞼を開く。彼は柔和な笑顔を浮かべると、目覚めの挨拶を口にした。まるで物語の一幕のようだが、そこは男が手にしたライト以外には明かりもろくにない下水道。とてもではないが、美しい光景とは言えなかった。]……今は夜ですよ、王子。もっとも、此処じゃ時間は分からないでしょうけど。[グリッサと呼ばれた赤毛の男は主に向かって手を差し伸べる。王子はすんなりとその手を取って立ち上がった。]