[施設中心には些細な中庭があり、周囲を取り囲むようロビーと廊下が配置されている。
続く廊下には幾つもの個室が連なっており、壁一面に配置された窓からは外の風景が望めぬ代わり、中庭の緑が目に映る。
僅かな緑とスターチスが咲く中庭は静けさを纏い、この空間にささやかな色彩を添えていた。
ひときわ広いロビーには、平均人型寸法の椅子と机が幾つか。壁際にはソファが置かれ、団らんの場が設けられているのだと推察できるだろう。
設置された大型ディスプレイには、半立体ホログラムで24時間ニュースが流れている。
内容は戦況がどうだとか、えらい人がどうだとか、そんな当り障りのない事ばかり。前線や塹壕、壊れて行くヒトモドキ達の情報は流れなかった。情報に制限がかけられているのだろう、合成音声がつまらない情報を垂れ流し、次いで始まるのは天気予報、クニ上層部からの都合のいい鼓舞激励。
見える範囲に階段は無く、廊下の一部から伸びた、透明な扉を挟んだ向こう側の空間、そこにあるエレベータには認証式ロックがかかっているようだった。
どうやら、限られた者しか他の部屋やフロアに移動できないらしい。]