―翌日・夜―
お、いらっしゃい?
[女が個室に入って来れば、男は黄昏色の瞳を細めた。
自らの血液を吸血鬼に差し出す代わりに、金を受け取る。
一定の需要がある事から、この世界の裏側にはそんなビジネスがひっそりと存在した。
勿論、人間の埒外に当たるので、そこで何かトラブルが起きないという保証はないが。
金に困ってか、ちょっとした好奇心か。
吸血による快楽を期待して、という変わり種もいなくはないが。
緊張している所為か、少し顔色の悪い女を向かいのソファに座らせると飲み物を勧める。
それは気遣いのようでいて、捕食する相手が力んでしまうと食事がしにくいからという理由だった。]