―記憶消去施設:診察室―
[それは、とても広い、白い空間。
まるで施設の本質を表すような部屋には、くたびれたような一人の男。
正確には一体のヒトモドキ、そしてあなたが居る。
天井は酷く高く、家具は少ない。
ぽっかりとした場所の中央に机が1つと、標準ヒトガタ寸法の椅子が2脚。片方には男が座っているが、さて、あなたは椅子に座れる身体をしていたか。
座れるようであれば座るように促し、拒むであればそのままだろう。
男は、相手が自身よりはるか大きければ見上げ、小さければ座って対面する。
この場所は診察室と名がつくものの、医療行為は行われない。
此処に在るのは僅かな対話と、簡易的な確認行為だ。
白い壁から吊り下げられた、自身が世話したドライフラワーのスターチスが揺れる。]