兼平家の人々
[ここで、白薔薇の持ち主だった家主たちの話をしましょう。
8年前の寒い時期に白薔薇を買った女の子の名前は、
兼平理音。この女の子のことを、これからはこの名前で呼ぶことにします。
理音は希望していた学部の試験に合格しましたが、その大学は家から遠いところにあります。通学のためには、大学近くで下宿をしないといけませんでした。
大きな鉢の中で8年以上もかけて立派に成長したバラの苗を下宿先にまで運ぶことはとても難しく、そのアパートの部屋のベランダ自体も、風通しなどの問題でバラを育てるのには適していませんでした。
そのため理音は、白薔薇を家に置いたままにせざるを得なかったのです。]