―定刻の少し前、広場にて―
[件の懐中時計はページボーイに預けていたのだが、その用途通りに役に立ったのは初めてのことだ。
周囲のチンピラは掃討済み。広場に辿り着いて一息ついた後のこと。
私一人で話してくるよ、と切り出す。
アリシアはなんとなく、フットマンは一人で来るのではないか、と感じていた。
その根拠は彼の人柄に由来するのだが――もっとも、確証の無い予感でページボーイは納得するだろうか。いや、しない。
連れてきた組員達が広く散開し、周囲の様子を窺う。何か異変があったりフットマンが大人数で会いに来るようなら、速やかに報告を回しこの場を離れるためだ。
この条件の下でようやくページボーイの許可を得られ、アリシアは安堵する。]
いつでもいいよ、おじさま。
──どうか、私の宝物を奪わないでね。
[呟く言葉は風に流れて消える。
広場の中心、枯れた噴水の縁に腰かけて空を見る。ついでに周囲にある使えそうな物や遮蔽も。
名目はたくさんある。犯人捜しも協定も、挨拶も情報集めもそうだ。
だがこの邂逅は果たして「何」になるのか。それは、終わってみなければわからない事だ。**]