[きゅ、きゅ、と男の瞳孔が不自然な収縮を繰り返す。そうしたら、きょろ、と目が動いて目の前の男の目──正確には、眼鏡に視線が合う。]《対象をスキャンします──》 《おおよそ26歳前後。 視力の著しい低下を確認。 レンズによる矯正度を照合しますか?》………いらん。[ぼそり、と男が人工知能の提案を一蹴する。空気読めよ、という顔をしたが、人工知能には無理な話だろう。元々、医療補助の側面が大きい人工知能だ。目の前に人間が立ったらとりあえずスキャン!をするのが、優秀な看護士でいる秘訣である。]