[あっちにふらふら、こっちにふらふら。
行く宛もなく、街の中をぶらついていると、いつしか日は落ちて夜のとばりが下りてきた。
寒くなってきたし、家に帰りたいところだが。
自宅の場所はわからない。知らない街である。
実は家がないというオチだったりしないだろうか。
割と途方に暮れながら、だいぶ空腹を覚えて一つの店の前に吸い寄せられた。ドアに『黎明街』と書かれている。
肩にかけていたカバンからベージュ色の財布を取り出し、中身を確認した。入っていた小銭はあまり見慣れていないように思えたけれど、財布に入っているということはお金なのだろう。]
……こんばんは。
まだ開いてますか。
[そしてそっと、私は扉を開いた。]