[知っての通り、アッシャー村の付近は小規模ながら良質な花崗岩の産地。
村を出て街に出る山道を少し行った、ほどよく開けた場所には石切場があって、数人の石工が楔を打ち込み、鑿をふるい、切り出した石材を注文通りにあるいは綺麗なブロックに仕上げ、あるいは熟練工になれば簡単に装飾を施し…そうして受注したとおりに仕上げた石材を荷車で町まで運んでいく。
そんな小さな組合の親分が俺の親父。
そして俺はその息子で、ようやく見習いの期間を終えたばかり。
毎日石を掘っては切り出し、きっちり鑿(のみ)と楔と金槌で四角く整えては運び出す…
とにかく肉体を酷使するが、さりとて脳味噌まで筋肉の詰まったような奴には務まらない、
なかなかこれでも難しい仕事ではある。
俺も、村の学校を出た後は少しの間親父に街の学校に通わされていたほどだ。
その頃はそうでもなかったが、戻ってきてから毎日腕を酷使し続けたせいで、とにかく腕っぷしは随分強くなった。
腕相撲なら、村で一二を争うと言ってもいい。
…まあ、親父にはまだ負けるが。]