[旅行鞄の留め具をきっちり閉める。]
もう準備終わってるかな。
[ふと思いつき、メッセージを送った。
彼には伝わりようのない照れ隠しの意味もあった。]
『準備できた? デッくん。』
[ふと小学校低学年の時の一幕を思い出す。
“バナナはおやつにはいりますか?”
本気だったか、冗談だったか。
本か何かで読んで真似したくなったんだったかも。
一緒に声を揃えてそんなことを先生に聞いてみた、それだけはっきりと、声変わり前の彼の声と自分の声の重なりまで思い出せる。
人間、不思議なことばっかりよく覚えてる。]