[仕える者が居ないなら、役目は果たせない。
加えて、メモリーの大半はまっさらだ。
あぁ、どうしよう、どうしよう。
諦めず機械の破片をどかそうとしていたアームが、
駆動音を立てて、力なく地面へと垂れ下がる。]
ここにクル、前のコト。
僕……何も、覚えテ、ナイ。
[覚えていることといえば自分の製造番号と、
備わっている機能の使い方、していいことと駄目なこと。
他に何か少しでも覚えていることはないのかな。
ランプを黄色く点滅させて、
消えてない記録が無いか、僕は必死で探した。
だって。このままだと僕は何をしていいのかわからない。
そのときの僕は、目覚めたばかりの機械だったから。
この壊れた機械の山に留まりたいわけじゃないのに、
理由もなく何処かに行くことはできなかった。]