話は変わりますが――…
ズィー、貴女に渡しておきたいものがあります。どうぞ。
[黒手袋を嵌めた右手に乗せてズィーに差し出したのは、手のひらほどの大きさの「ネズミ型の」機械。
といっても、毛が生えていないのはおろか、耳も尻尾も手足も無い。
ネズミはネズミでも、コンピュータのマウスのほうに似た形状だ。
ただし機体前方には小さな目の形が、きちんと二つつけられている。]
通信機です。
お腹についているスイッチをオンにすれば、
私と離れていても会話ができます。
万が一の時は、これでご連絡くださいね。
[具体的な使い方を問われたならば、簡潔に教える心算で。
電話の受話器のように耳に当てずとも、スピーカーフォンのように、ある程度顔から放した状態でも声を届けることができる通信端末だ。]