― 秋・文化祭/美術部展示前 ―
[友人は席を外しているのだろうか。
結月はひとりで展示物の前にいた。
美術部は文化祭、秋のコンクールを経て引退となる。
だから学校行事としては最後の舞台だ。
特に何の問題もなければ、
見覚えのある作風が少女の前に並ぶだろう。
もしかしたら名前も一緒に添えられていたかもしれない。]
……。
[背後に見える廊下は人で溢れ、生徒たちの声は途絶えない。
展示スペースも盛況だったか、ちょうど静かなタイミングだったか。
もしかしたら美術部員がひとりふたり詰めていたかもしれないけれど。
今の結月はただ、作品を見つめるだけだ。
見ているのに表情は映らない。物言わぬ背中だけがある。]*