【M】 偵察兵見習い タリア

トループに着いた後

[トループに着けば彼女とは別れ、目指す方角に足を向けたか。10年ぶりのトループに抱く想いは微妙なもので、望郷の念に駆られるほど良い思い出などなく、それでいて馴染みのない国だと切り捨てられるほどメトロポリスに馴染んだわけでもなかった

確かにそこにある空気や建物、景色の色は、記憶の中のトループそのもので、一度ギュッと目を瞑りそして薄く目を開ける。そんなことじゃこの景色は変わる筈もないのに。

ボクの足は表通りを抜けていく。此方を気に留める者など表通りには一人もいない。それでも裏路地に入ろうとすれば数多もの視線を感じた。標的として定める目、憐れむ目、止めようか迷う目、此方をそんな目たちが一斉に向く。

それでもボクは、裏路地に足を踏み入れようとする。”親切な”誰かが、止めようとでもしない限りは。　*]