― 文化祭の後/図書室 ―
[名前のない呼びかけが自分を呼んでいることに気づけたのは
声の主が鬼束だったからだ。>>2:138
春の出会い以降も彼女は図書室へ通う。>>2:42
部活をやめて、同学年以外との関わりが委員会だけになって、
そんな中で出会った鬼束は、結月の数少ない後輩だった。
声をかけてきた彼女の手には一冊の絵本がある。
普段は会釈ばかりだから珍しいと思えば、そういうことか。
結月は納得したような様子で、自分からも鬼束へ近づいた。]
こんにちは。……あは。
そういう時は、好きな話かどうかを聞くものだと思ってた。
[絵"本"なのに、鬼束は結月に絵のことを尋ねる。
POP書きを見られていたからとしても、結月は微かな苦笑を零す。
嫌がっている様子はなかった。その反応は前よりずっと穏やかだ。
鬼束が"前"を知らない以上、普通の反応というだけなのだが。]