[ここで少しだけ、ヘロン・メイファの出身世界についての話をしよう。
「出身世界」という言い回しから察した者もいるかもしれないが、その世界は、古には魔法文明栄え、今や機械文明へと移行したこの世界……とは完全に別の世界だ。
ヘロンの出身地であり拘束地でもあるパンパス・コートという王国は、その王国自体がひとつの小世界。
そしてこうした小世界――“リージョン”と呼ばれるものを数多内包しているのが、“混沌”と呼ばれる広大な世界。
喩えるならば、小世界が惑星もしくは銀河、“混沌”が宇宙空間に相当すると捉えても差し支えないが、“混沌”では小世界ごとに物理法則や、魔法法則までもが完全に異なることもある。
機械文明が発達した小世界。
魔法文明が優勢な小世界。
機械と魔法が両立する小世界。
そのいずれもが存在できるのが、この“混沌”だ。]