[幸か不幸か、組織の方から宿に関する情報は流れてきていない。それが何も起こっていないことを意味するのか、はたまた「発覚していないだけ」なのかはわからないのだけど。
彼が私を見かけたからといって、話しかけ宿の名前を出す理由はそう多くないだろう。
宿を使って脅迫するか、純粋に心配をしてくれているのか。
あまり気分の良くなさそうな表情を見れば、後者と思うのが自然で。]
……嵐は今、必死に塞き止めてる所。
もしかして──「元凶」のことを何か知っているの?
[と、遠回しな言い方をやめて直接尋ねるだろうか。
彼?彼女?とにかく中性的な容姿の彼(曖昧なため判断は灰色のまま濁したアリシアだ)からはあまり敵意を感じられず、つい踏み込んだことを尋ねてしまう。
素性を未だ尋ねすらしていないのだが、もしかすると彼もこの嵐に何かを「奪われた」人間なのではないか、そんな予想を浮かべる程度に。
フィジシャンから聞いた「葬儀屋」の特徴>>191と目の前の彼が一致するまではもう少しかかるだろうか。
手に持って弄る機械部品らしき物は彼の常備品にとても合いそうに見えず、嫌な予感を増していく中。
目の前の人物からの返答を、小さな焦りに急かされながら、ただ待つ。*]