とある前線区域
《照準・あと2mm右です。》
…うるせぇな、“視え”てるよ。
[チャキ、と耳慣れた金属音がして、ほんの2mm銃身が右へ傾く。
スコープも何もないライフルも、男の双眸さえあればそんなものはいっそ邪魔だ。
きゅ、きゅ、と両目の瞳孔が人体にしては不自然に動いて機械的な収縮をする。
ピクリ、とトリガーにかかった指先が微かに跳ねるように動く。肉眼では目視もできないような距離の物陰から、動く影が出て───]
[──パンッ!]
[高い銃声が鳴って、物陰から覗いていたものを撃ち抜いた。
バシュッと対象を弾丸が撃ち抜く音がして、微かにバチバチッと火花が飛び散る音がした。]