回想、虎穴に入った兎
[こうして、紆余曲折を経て私は数日後、
看守の買収を経て"思想犯の階層"に足を踏み入れた。
そこは、一言で言えば"厳冬"だった。
しん……と凍り付くような静けさと漂う空気感は、何者をも拒む何らかの意志を感じずには居られない。
ここでの発言は、命取りだと慎重に言葉を選ぶ。
終ぞ、"うわさばなし"の犯人の名を聞く事が出来なかった私は、その人にだけ分かる
言葉を小さく呟く。]
……ルミの妹なのよ。
心当たりのある人はいるのよ?[小さく息を吞みながら言葉を紡げば、反応を待つ。
その言葉は、突拍子もなく警戒されるかもしれない。
そも、か細いくらいに小さく届かないかもしれないし見当違いの可能性もある。
反応が無ければ、それでもいい。義父達の作戦成功を祈るだけなのだから*]