[祭りはまだ、ひときわ賑わっていた。
仄かに焦げたぽきゃ饅頭の香りと、笛の細い旋律が宙に流れている。
喧騒の中で、ミィ男爵はふと、違和感に首を傾げた。
隣の席が――空っぽだった。]
[シャロン。
そして、あの「めんそーれ」と名乗っていた人物。
数分前まで確かに話していた、ふたりの姿がどこにもなかった。
椅子に腰かけたまま、空の器ともう一つの饅頭の包み紙を見る]
シャロンが最後に言ったのは……“ご一緒しましょう”だったか。
食後に向かった先が“存在しない”ということは……ふたりとも、導かれたか、呼ばれたか、あるいは――消されたか