[それは10年前>>3。
「シンギュラリティ」の残党に大切な人を売った男の物語。
相手の素性も知らぬまま、けれども「電脳化」については聞いた上で乗ってしまった甘言。
ひとりの女を金で売り不帰の人にした、実験の実質的な共犯者。]
―――――…、そう。
[「悲しむべき程に」怒りは湧かない。この女はそういう機体に入れられた。
相変わらず静止したままの「鳥」を肩に留まらせたオクリビは、下げた両腕を持ち上げることも、握り拳を作ることもせず。
ホールドアップの姿勢でこちらに近づく“正直者”の意思>>4を、その場で黙って聞き遂げる。]
……貴方が犯した罪も。貴方が戦う理由も。
この国に貴方が何を求めているかも、解りました。
私から“私”を奪った者の生き残りに、
結果論とはいえ貴方が加担した、ということも。