(夢に囚われるだの遊園地に監禁されるだのある訳――…
あったならまあ、その時はその時だ。
「楽しい思い出」とやらが実際どんなものか、
試してやろうじゃないか)
[いわばただの他愛ない、子供じみた好奇心から、ヘロンは手にしたチケットを枕の下に滑り込ませる。
この「子供じみた好奇心」がエンジニア・ヘロンをエンジニアたらしめた要因であり、そしてあの「裏切り」の一因ともなったわけだが、これについてはひとまず置いて。
ヘロンがここで「夜の遊園地」という語に疑問符を浮かべなかった程度には「そういう施設」についてそれなりの知識が既にあった訳だが、これについてもまた別の機会に。
刑務官による居室内のチェックは、余程のことがない限り、翌朝になるまでは行われない筈だとヘロンは考えて――。
そして実際、この夜にまさかの不意打ち検査がやってくることはなかったのだ。**]