[ スープボウルに注がれたスープを両手で受け取り、
小声で礼を言って、少女はほう、とかすかな息を吐いた。
つやめく黄金色のスープが、水面のように揺れている。
煮込まれた野菜たちの欠片をじっと眺め、
白磁を指先で撫でたり、消える湯気を見送って。
そういえば、となんとなく、店へ来るまでを思い出した。
なにかが痛かったことだけ、憶えている。
──曖昧な傷を癒すようなスープの温み。
一口飲んで、瞳を少し瞠る。
やさしい匂いと一緒に、野菜の甘さが口へ広がり
少女にも随分飲みやすい味だった。
スープの中で踊っていた野菜もほろりと溶け、
シンプルなのに深みのあるスープを数口飲んで。 ]