[──トループの国境門を潜る瞬間、男は突然失速した。そうすると、途端に後ろを走っていた突風が、男の髪や服を巻き上げながら通り過ぎていった。]伝達。この勝負はお前の勝ち。解散。 《承認──メッセージを送信しました。》[直後、随分と離れた屋根の上で同僚が派手に転倒するのが見えて、いやぁ可哀想に、と男は笑った。まさか、いくら浮かれているとはいえ、そんな悪目立ちするようなことを本当に完遂するわけがない。おれは行きたいとこがあるんだよ、と恨みがましそうに振り返っている同僚に舌を出した。]