[2回目のおはようの挨拶をして。
自分からは2回目のおやすみの挨拶もして。
3日目の夜がやって来る。
眺めていた図鑑のページを開いたまま。
深夜まで椅子に座り、息を押し殺していた。
シーツをロープにして窓から降りることを考えた。
予備もあるから十分に足りるし、危険性も少ない、分かっていながら足がなかなか動き出そうとしない。
テーブルにカップはひとつだけ。
ドアは内側から開くだろう。
物音を立てないように隙間から身を滑らす。
自分の部屋はオートロックではなかった。
誰かに見られた時のために今夜はこの世界の服のまま、廊下を進み、宿舎の出入り口のドアに向かっていく。
昨夜より時間が過ぎたせいで夜明けが近い。
廊下の窓の向こうの空は黒が薄らいで感じられた。
結果としては何か――結界なんて予想もしていない――に阻まれて宿舎から出ることは叶わず、人の気配を避けながら部屋へ逃げ戻ることになった。]