[正体をなくすほどに擦り切れて
それでもしがみ付いてきたこの鬼火が、
この世に留まっていた理由をあたしは知らない。
魔法使いの見立てによると、
元々ご先祖様が契約していた使い魔か何かの
なれの果てじゃないか、という説が有力らしい。
次点で未練を残した本人の魂、その残滓。
正直に言うとはた迷惑な話だと思った。
子孫だからって、なんであたしが……。
それでも、何も知らないまま
名前ごと上書きしてよかったんだろうかと。
憐憫のような後悔のような気持ちが時折過ぎる。
考えたってどうしようもないのに。
お互い、うまくやってくしかないのにね。]**