[微かな星灯りばかりが窓に映る部屋。
飾り気のないテーブルの上にはランタンひとつ、最低限の質素な筆記用具が一揃い。
暖色の光に照らし出された手紙を眺めながら、まっさらな一枚に筆を走らせていく。]
《 もしかして、今までずっと。
連絡つかなくて困らせてたとか
そういうこと……あるな。うん。 》
……ごめん。
[伝わることのない謝罪がひとつ、静かな部屋に響く。
興行主によっては、公演の際にファンレターの宛先を指定して手紙を届けて貰えることもある。けれどもそれも公演終了後の一定期間まで、ということがしばしばで――。
そしてそういう計らいが得られなかったなら、なおのこと、一座としての連絡先は不明瞭になる。
ちなみに「一座内での郵便連絡ルート」であれば密かに存在するのだが、それについては別の機会に。]