>>30 ウロボロス
[その時はまだ寝入って数分の、ごく浅いところにいた。
そんな時、人間は夢を見る。
部屋に白く光る大きななにかが入ってくる。こちらに近付いてくるにつれて形がはっきりとしてくる。幼い頃に絵本でみたことがある、伝説の生き物。
なんでも切り裂く爪と牙はとても硬く、自分の持っている道具では粉にできないだろう。
でももしかしたら触るだけで何かわかるかもしれないから触ってみたいな……]
……
[足音を鳴らしながら部屋に誰かが入ってきていても、この男は目覚めなかった。
服をくつろげたり身体に布団をかけたりすることもせず、シーツのうえに寝ている姿は明らかに『睡魔に耐え切れず倒れこんだ』風情が漂っている。]