[佐次詩羽と名乗った彼女が何か話しかけてきたなら、無視することはせず、言葉少なに返すだろう。
こちらからはまだその余裕はなかった。
近くに他に眠る人がいることにすら気が回っていなかった。
ドアの開く音がする。
自分の世話役という存在が到着したらしい。
もうよくわからなくて為すがまま。
ふらふら立ち上がり、その人がきちんと入室する前にドアのところで鉢合わせるように対面する。]
……。
…………ぁ、
[体格の良い大柄な男性だった。
自分の身体に影が落ちる。
心臓が嫌な音を立て、人の良さそうな笑みの浮かぶ顔まで見上げることはできず、遅れて煙草に似た匂いを感じた。
手が伸びてきて、そっと肩に、]