す、すみません、……私は、世話役、いらない。
ひとりでへいきだから。
[喉がカラカラに乾いたかのように。
声が上手く出なくて、後ずさる。
世話役予定の彼も戸惑ったのだろう、動きが止まったその隙に――閉められていないドアから駆け出した。
説明を理解しようとしていなかったから、ギルドとか、宿舎とか、単語だけで頭にあって、今は何も浮かばない。
パニックになっていると自覚できていない。
裸足で廊下を駆ける。
駆けているつもりが、足取りはふにゃふにゃで、実際はさほど進めてはおらず、宿舎を出ることも叶わない。
必死に進む先に、その人は、いた。
大きなぬいぐるみのようなその姿。>>29
目を見開き、眉を下げ、唇をゆがめて。
声もなくその後ろに回り込むと、背中に隠れて小さくぶるぶると震えていることだろう。*]