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[6月のタラッシリアの気温にあまりふさわしくない、きっちりとすべてのボタンを留めた服装の男が花めき通りを歩いている。
途中、ある露天商に『おぉい、あの薬草入ってきたぞ』と呼び止められ、さっと振り返った。]
本当ですか。
……ありがとうございます。
[ニコリともしないで頭を下げた。]
[ターレディアンの饗宴が始まると、この時期にしか訪れない商船や商隊がやってくる。
この男はこの季節、実りの時期を迎えた植物や果実、それに外からやってきた珍しい物を買い求めては自宅兼研究室に篭もる、その繰り返しの生活を送っていた。]