――午後・カフェ(過去軸)――
[私は緩慢な動作で廊下を歩く。壁にはまだ、グリーディアと一緒に眺めた落書きが残されている。消されていないで良かったな、など考えたり。
そういえば庭園には小さなネズミがいるなんて噂も耳にしたが、小さな生き物も、落書きも。そんなには宇宙船の運航を邪魔するものではないし、そのままであると嬉しいと願った。
――と、ぺたぺたと何か丸っこいシルエットが近づいてきた。
あれは……ペン、ペン吉。
私はペンギンアンドロイドたちに勝手に通名を付けていて、知り合いの何人かには「この子はペン吉って呼んで見てるんですよ」など紹介したことがある。
だから同じように呼んでいる人もいたりするだろう。
ペン吉は私に、アーネストが私を探している旨を機械的な発声で伝えてきた。
私は先程彼女に珈琲豆を送り、そのお返事を頂いている。
何か直接伝えたい事や用事が出来たのだろうか。]>>32