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彼女の言う甘い物とは、自分の知った物とは全く違うらしい。スラムで暮ら子と自分との違いをまざまざと突き付けられたが、けれどそういう子が描いた夢が、彼女の王国なのだ。
暮らしの中に身近と溢れている筈の暴力に手を伸ばす訳でもなく、誰かの幸せの形を模索する。
そんな国にわたしの要望が付け加えられれば、心の中である種の安堵が生まれるのだ。
異端のわたしを知る者は怒るだろうか、呆れるだろうか、相応しくないと遠ざけようとするのだろうか。
けれどもこの女王が許すであれば、わたしにとってはその一言で十分すぎる。]
……君の国が大きくなった頃、
わたしはまた、君の元を尋ねよう
[それは「夜の女王のアリア」の幹部として?それとも、わたし個人として?
分からない。けれどどのような理由にしろ、いつか会いに行こうか。
女王との会話を暫しの休息と当てて居たが、そろそろ十分だろう。
自分の腹を抑えていた彼女の手を軽く退け、ゆっくりと立ち上がる。
出血が止まった訳でも無いし、傷は未だ熱を持ったまま。自己修復機能なんてついていない身体を持て余し、自分の手に付いた血液を赤い外套で拭う。
赤色は恐らく彼女の手をもべったりと汚してしまっていただろうけれど、生憎今はハンカチなんて品は持ち合わせていなかった。]