[主が愛する人を得た時は嬉しかった。
人間と吸血鬼という種の違いから、その幸せが有限のものである事は分かっていたが、主に仕えていたもの達―当時は男も人間だった―は少しでもそれが長くある事を願っていた。
けれど“運命の相手”は若くしてこの世を去ってしまう。
主は悲嘆に暮れ、憔悴した。
いっそ忘れてしまった方が幸せなのではないかと思う程に。
けれど自らを滅ぼす事は出来ず、消滅する方法を見つけようとするでもなく。
そんなある日、主は“運命の相手”を探しに行くと言い出した。
彼女はまた別の場所で生を享けている筈だからと。
それは遠い外国の思想だったが、主がまた微笑んでくれるのであれば何でも良かった。]